「症状がないから大丈夫」ではない

「健康診断で肝機能の異常を指摘されたけれど、症状がないから様子を見ている」という方は少なくありません。しかし、肝臓は異常があっても自覚症状が出にくい臓器です。症状が現れた時には、すでに病気が進行していることも珍しくありません。
肝臓が「沈黙の臓器」と呼ばれる理由
肝臓は再生能力が高く、多少のダメージを受けても機能を維持できる臓器です。そのため、異常があっても痛みや不調として感じにくいという特徴があります。
「症状がない=健康」とは限りません。肝臓の病気は、気づかないうちに静かに進行していることがあります。
肝臓病の進行パターン
肝臓の病気は、長い年月をかけて段階的に進行していきます。
脂肪肝の場合
肝臓に脂肪がたまった状態が脂肪肝です。初期の脂肪肝は生活習慣の改善で良くなる可能性がありますが、放置すると肝臓に炎症が起こり、脂肪肝炎(MASH)へと進行することがあります。
脂肪肝炎の状態が続くと、肝臓の細胞が徐々に壊れて線維化が進み、やがて肝硬変へと至ります。肝硬変になると肝臓がんの発生リスクも高まります。
この進行には10年から20年かかることもあります。若い頃からの脂肪肝を放置した結果、50代、60代で肝硬変や肝臓がんと診断されるケースも少なくありません。
ウイルス性肝炎の場合
C型肝炎やB型肝炎に感染すると、ウイルスが肝臓に棲みついて慢性肝炎を引き起こすことがあります。慢性肝炎は自覚症状がほとんどないまま、肝臓の炎症が長期間続く状態です。
治療をせずに放置すると、肝臓の線維化が徐々に進み、肝硬変へと進行します。さらに肝硬変の状態が続くと、肝臓がんが発生するリスクが高まります。
C型肝炎は現在、飲み薬で治療できるようになりました。早期に発見して適切な治療を受けることで、肝硬変や肝臓がんへの進行を防ぐことができます。
肝硬変になるとどうなる?
肝硬変は、肝臓の細胞が壊れて肝臓が硬くなり、肝機能が大きく低下した状態です。以下のような症状が現れることがあります。
- 腹水(お腹に水がたまる)
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
- むくみ(特に足や顔)
- 出血しやすくなる
- 強い倦怠感、疲れやすさ
- 意識がぼんやりする(肝性脳症)
など
肝硬変まで進行すると、元の健康な肝臓に戻すことは困難です。だからこそ、肝硬変になる前の段階で発見して、進行を食い止めることが重要です。
肝臓がんのリスク
肝硬変まで進行すると、肝臓がんが発生するリスクが高まります。日本の肝臓がんの多くは、肝硬変を背景に発生しています。
肝臓がんは早期に発見できれば治療の選択肢が広がります。肝臓の病気がある方は、定期的な検査で早期発見に努めることが大切です。
「大丈夫」と言われても安心できない理由
健康診断で「基準値内です」「様子を見ましょう」と言われて安心している方もいるかもしれません。しかし、健康診断の基準値は「正常」の範囲が広めに設定されていることがあります。
2023年に日本肝臓学会が発表した「奈良宣言2023」では、ALT 30以上を肝臓専門医への受診目安として定めています。一般的な基準値(45程度)では「正常」と判定されても、すでに肝臓に異常が始まっている可能性があります。
「大丈夫」と言われた方も、一度専門医へご相談いただくことをおすすめします。
早期発見・定期検査の重要性
肝臓の病気は、早期に発見すれば進行を防げる可能性があります。
- 脂肪肝の段階であれば、生活習慣の改善で良くなる場合がある
- C型肝炎は飲み薬で治療できる時代になった
- 肝硬度測定(エラストグラフィ)で肝臓の硬さを数値化し、リスクを評価できる
「症状がないから」と先延ばしにせずに、定期的な血液検査とエコー検査で肝臓の状態をチェックしましょう。
当院でできること
吹田市山田の山田駅前もりした内科クリニックでは、肝臓専門医・指導医による診断と治療を行っています。エコーによる肝硬度測定(エラストグラフィ)で、肝臓の状態を詳しく評価いたします。
生活習慣の改善が必要な方には、具体的な目標を設定してサポートします。入院や手術が必要な場合は、連携する基幹病院・専門医療機関へスムーズにご紹介します。肝臓で気になることがあれば、お早めにご相談ください。