院長インタビュー

肝臓は「沈黙の臓器」だからこそ
放っておかず、早めの受診を
なぜ医師を志したのですか?

兄が医学部に進んだ姿を見て、人の役に立つ仕事ができることに魅力を感じ、医学部に入りました。医学部で学びながらどの道に進むかを考えていた時、祖母が胃がんになり、内視鏡を使った手術でお腹を切らずに治すことができました。この経験から「内科でもがんの治療ができる」と知り、消化器内科に興味を持つようになりました。
消化器内科は検査と治療の両方を行うことができ、幅広さと専門性を持ち合わせている点にも惹かれました。お腹の病気で悩む方は非常に多いので、そういった方々のお役に立ちたいという思いで消化器内科を専門に選びました。
肝臓の道に進んだ経緯は?
出身である大阪大学の消化器グループは、C型肝炎の研究で日本でもトップレベルの実績がありました。大学院に進んだ際、与えられた研究テーマがC型肝炎の新しい治療に関するものでした。ちょうど副作用の少ない飲み薬が登場した時期で、どのような患者さんに効果があるのか、どのような方には効きにくいのかを研究していました。
消化器内科は大きく分けると、胃や腸などの消化管を診る分野と、肝臓を診る分野に分かれます。私は大学院で肝臓についてしっかり学ぶことができましたし、同時に内視鏡の技術も磨いてきましたので、両方をしっかり診られるのが当院の強みだと考えています。
C型肝炎の研究で印象的だったことは?
研究している間に、本当に多くの患者さんが治っていきました。以前はインターフェロン療法という副作用の強い治療しかなく、発熱などの症状に苦しみながらも治る方は半分以下という状況でした。それが飲み薬の登場で状況が大きく変わりました。
C型肝炎ウイルスが発見されたのは1989年頃で、比較的新しい病気です。自分が医師として働いている間に、一つの病気がほぼ終息に向かっていく。その過程に携われたことは、今でも大きな財産になっています。ただ、まだ検査を受けておらず感染に気づいていない方や、ウイルスは消えても肝硬変や肝臓がんのリスクが残っている方もいらっしゃいます。そういった方々の治療にも引き続き取り組んでいきたいと思います。

「大丈夫」と言われてきた方こそ
一度、専門医に相談してほしい
肝臓の病気が放置されやすいのはなぜですか?

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、かなり進行しないと症状が出にくい臓器です。数値が高くても自覚症状がないと、患者さん自身も「大丈夫だろう」と考えてしまいがちです。医療者側も「様子を見ておけば大丈夫」と伝えてしまうことがありました。
しかし実際には、脂肪肝を若い頃から放置して、50代、60代で肝硬変になったり、お腹に水が溜まってご飯が食べられなくなったり、肝臓がんが見つかったりする方を何人も見てきました。放っておいてよいことはありません。脅かすわけではありませんが、「このまま10年、15年放置すると、こうなる可能性があります」と具体的にお伝えするようにしています。
どんな方に受診を推奨しますか?
健康診断でALTやγ-GTPなどの肝機能の数値が高いと指摘された方は、ぜひ一度ご相談ください。一般的な基準値は45程度に設定されていることが多いのですが、2023年に日本肝臓学会が「奈良宣言2023(※)」を発表し、ALTが30以上であれば受診を推奨するようになりました。基準値内でも30を超えていれば注意が必要です。
また、糖尿病の方は肝臓がんの合併が多いと言われていますので、症状や検査に異常がなくても年に1回は腹部のエコー検査を受けていただきたいです。高血圧や脂質異常症など他の生活習慣病がある方も、肝臓に気を配る必要があります。C型肝炎・B型肝炎については、市や府の肝炎検診がありますので、一生に一度は検査を受けることをおすすめします。
※奈良宣言2023…脂肪肝の増加を背景に、日本肝臓学会が2023年に発表した提言。ALT 30超えでまず受診し、かかりつけ医と専門医の連携で肝疾患の早期発見・早期治療を目指すもの
脂肪肝について教えてください
脂肪肝というと「お酒の飲みすぎ」というイメージがあるかもしれませんが、お酒を飲まない方にも起こります。脂肪肝はメタボリックシンドロームと深く関係しており、高血圧や糖尿病、脂質異常症と同じように生活習慣病として捉える必要があります。残念ながら現時点では脂肪肝そのものを治す薬がありませんので、運動や食事など生活習慣の改善が治療の中心になります。
ただ、体重を2~3㎏落とすだけでも肝機能の数値が目に見えて改善することが多いです。患者さんと一緒に「3か月で体重を2㎏落としましょう」といった具体的な目標を設定し、達成できれば次のモチベーションにもつながります。効果が数値として現れやすいので、「このくらいの体重を維持していれば大丈夫ですよ」という目安も作りやすい疾患です。

大学病院レベルの検査を
地域のクリニックで
クリニックの肝臓内科の特徴は?

肝臓専門医・指導医として、大きな病院に行かなくても専門的な検査や治療を受けられる環境を整えています。特にエコー検査には力を入れており、大規模病院でも使われる「肝硬度測定(エラストグラフィ)」が可能なエコーを導入しました。肝臓だけでなく、膵臓や胆のうのわずかな変化も観察でき、小さな病変も見逃さないよう心がけています。
エコー検査は患者さんの負担が少なく、採血だけではわからない情報が画像で得られます。脂肪肝の有無や程度もわかりますし、肝臓の専門的な診療をする上で欠かせない検査です。肝機能の異常を指摘された方、脂肪肝と言われたことがある方は、症状がなくても一度詳しく調べておかれることをおすすめします。
肝硬度測定とは何ですか?
超音波を使って、肝臓の硬さを数値で測定する検査です。肝臓は炎症が長く続くと線維化が進み、硬くなっていきます。硬くなった状態が肝硬変で、肝臓がんのリスクも高まります。従来は肝臓の組織を採取する肝生検という検査が必要でしたが、肝硬度測定であれば体に負担をかけずに肝臓の状態を把握できます。
検査は約1分で終わり、痛みもほとんどありません。脂肪肝の方でも、どの程度進行しているのか、将来的なリスクがどのくらいあるのかを評価するのに役立ちます。クリニックでこの検査ができる施設はまだ限られていますが、肝臓を専門的に診る上で非常に重要な検査だと考えています。

患者さんと一緒に考えて
納得できる治療を
C型肝炎の治療について教えてください

C型肝炎は、今では飲み薬だけで治療できる時代になりました。かつてのインターフェロン治療のような強い副作用もなく、ほとんどの方でウイルスを排除できるようになっています。当院への通院で治療が可能ですので、大きな病院に行かなくても対応可能です。
B型肝炎についても、飲み薬を使った副作用の少ない治療が可能です。ただ、まだ検査を受けておらず感染に気づいていない方もいらっしゃいます。肝炎ウイルスは血液を介して感染するため、過去に輸血を受けた方、鍼治療を受けた方なども検査をおすすめします。
市や府の肝炎検診は無料で受けられることが多いので、ぜひ一生に一度は検査を受けていただきたいと思います。
診療で大切にしていることは?
患者さんがなぜ受診されたのか、本当の目的を対話の中で把握することを大切にしています。同じ「肝臓の数値が高い」というご相談でも、薬を出してほしい方もいれば、しっかり検査して原因を知りたい方もいらっしゃいます。ご家族に肝臓病の方がいて心配されている場合もあります。必要性の高い検査や治療ははっきりとおすすめしますが、判断が分かれる部分は「こういう方法もありますよ」とお伝えし、患者さんと相談しながら進めていきます。
生活改善が難しい方には、なぜ目標達成が難しいのかを一緒に考え、無理のない方法を探します。色々な選択肢の中から、患者さんに納得していただける形で治療の方向性を決めていくことを心がけています。

肝臓のことで悩んでいる方へ
まずは気軽にご相談ください
最後にメッセージをお願いします

これまで多くの患者さんを診てきた中で、「もっと早くご相談いただけていれば」と感じる場面が何度もありました。一方で、早い段階から一緒に取り組んできた患者さんが、数値の改善を喜んでくださる姿も見てきました。
肝臓の病気は、早く気づいて対処すれば、決して怖い病気ではありません。少しでも気になることがあれば、お気軽にご相談ください。皆さんの「10年後、20年後の健康」を一緒に考えていきたいと思っています。